5月18日から20日にかけてマレーシア・ペナン島で開催された富裕層向け旅行商品の商談会「WTM(World Travel Market) Connect Asia」(以下、WTM)に参加してきました。
WTMは毎年ペナン島で実施されている、いわゆる「インビテーションオンリー」(招待されたものしか入場を許されない)のクローズドな商談会です。
今年も、マレーシア旅行や東南アジア旅行に関わる出展社、バイヤーなど総勢300名程度が集まりました。
当社(ルート・アンド・パートナーズ)グループはシンガポールに拠点を置いてラグジュアリートラベルを企画・開発したり、旅行会社へのアドバイスなどを行っている関係で、このようなアジア富裕層を対象にした商談会にVIPバイヤーとして招待されるようになりました。
WTMでは、マレーシア政府観光局やペナン観光局のトップが必死に自国を売り込むなど、熱のこもった富裕層旅客争奪戦の様子を垣間見ることができます。
またWTMは当社グループにとって、東南アジアの富裕層向け旅行産業の重鎮たちとネットワークを築き、情報や人脈をアップデートできるとても貴重 な機会です。
これまでの3年間で30ホテルを超えるラグジュアリーホテルと取引が開始できたのも、WTMのおかげといって差し支えないでしょう。
アジア富裕層は何をしたがっているか
今回は、WTMに参加して改めて感じたアジア富裕層へのアプローチ方法について、私なりの視点から記してみたいと思います。
まずは、アジア富裕層の行動を知るヒントとして、彼らから当社グループに対してどのようなリクエストがあるのかを列記してみましょう。
- 日本のミシュラン星付きレストランへのアテンド
- 日本法人設立における取締役等の紹介
- 日本での不動産等のアセット取得の情報提供
- 子供の高校/大学留学時の保証人依頼
- ビジネスインターン依頼
- ビジネスマッチング情報提供依頼
- 日本人男性・女性の紹介依頼
- 日本国内のデスティネーションマネジメント依頼
- コスメ、美容外科等の情報提供依頼・・・など
アジア富裕層と接していて感じるのは、一言でいうと「ギラギラ」しているということです。
日本の富裕層が失ってしまったような強い「欲」で満ち溢れているのです。
アジア富裕層の財布を押さえたければ「旅行」を押さえよ
その上でアジア富裕層へのアプローチの方法を見ていきましょう。
私は世界各国で行われる展示会や商談会に頻繁に足を運びます。
中でも今回のWTMのような旅行の商談会にはできるだけ参加することにしています。
その理由は2つあります。
理由の1つは、当社グループのビジネスにとって旅行産業はきってもきれないものであるからです。
富裕層の旅行そのものに消費が付随する傾向が顕著になってきています。
私は、アジア富裕層の財布を押さえたい、というニーズがある産業は、すべからく旅行産業の動向を注視しなければならないと考えています。
簡単に言うと、「2週間のバカンスに行く → その間にたくさんの買い物をする」ということです。
アジア富裕層は自分の国で消費行動をすることにはあまり熱心ではありません。
また、シンガポールにいると特に強く感じるのですが、アジア富裕層の日本への関心は極めて高いものがあります。
前述の「当社グループへのリクエス ト」でも触れたように、特に日本の食は大きな関心事になっています。
日本の旅行産業が取り組むアジア富裕層インバウンドは、コンテンツの中心に食を置くべ きだと言えるでしょう。
的が絞れていない場合は「まずは食から」が王道と言ってよいと思います。
富裕層が富裕層にサービスを提供
私が旅行の商談会に参加する2つ目の理由は、富裕層がホテルやリゾートを経営しているという実態があるからです。
アジア富裕層にはホテル産業(=旅行産業)を始めるファミリーがとても多く、彼らが獲得を目指す顧客もまた富裕層という構造になっているケースが 多く見られます。
つまり、東南アジアの旅行産業では、富裕層が富裕層に向けてサービスを提供する世界が出来上がっているのです。
アジアには星の数ほどのスパリゾートがあり、そのほとんどが富裕層ファミリーの事業の1つとして運営されています。
老舗では「アマンリゾート」や 「シックスセンシズリゾート」、新しいところではベトナムの「Vin Pearl」やプーケットの「Trisara」など、滞在型施設で「なにもしないこと」が一番の贅沢とされるようなスパリゾートが、アジアの著名なリゾー ト地で年に20~30のペースで増加し続けています。
富裕層にとっては、「自分ならこうするのになあ」という自らのニーズをもっとも体現しやすいのがホテル産業なんでしょうね。
そうした世界の動きをしっかり押さえ、富裕層のニーズを把握するために、旅行の商談会に出向いています。
アジア富裕層の「欲」を刺激せよ
最後に参考情報としてペナン島の不動産投資の可能性についても触れておきましょう。
お恥ずかしい話ですが、私はペナン島をハワイやプーケットのようなデスティネーションリゾート、つまり休暇を過ごすためだけの場所、と勘違いしていました。
しかし、ペナンでは海辺のあちこちに高層コンドミニアムができ始めており、その価格が驚くほどに安い!
100平米で2000万円前後の新築物件がどんどん造られています。
ペナンは穴場なんだなと今回改めて痛感しました。
ペナン島もさることながら、アジアには無数の島があります。
その島すべてに開発余地があるとしたら・・・やはりアジアの時代はこれからやって来ると考えるべきでしょう。
ASEAN諸国だけを取っても総人口ではすでにEUをしのぎ、その成長率が(ボラティリティは高いとはいえ)目覚ましいことは周知の通りです。
米 国の利上げ観測がアジア投資にブレーキをかけているなど様々な憶測も流れていますが、なんだかんだ言いながらアジアにはカネが集まっています。
そのア ジア諸国での消費や投資をリードするアジア富裕層の動向からはやはり目が離せません。
繰り返しになりますが、彼らには日本人が失いつつある「欲」がまだまだたくさんあります。
彼らの欲を刺激すればビジネスは大きく動くはずです。
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